茅野市の千年豆腐 小林豆腐さん

茅野市の食文化を巡るシリーズ第1回。
今回は小林豆腐工房さんを訪ねて、【千年豆腐】の製造における拘りを伺います。
また千年豆腐を使ったお薦めの食べ方を茅野市在住の地産地消料理研究家の中村恭子さんにご提供頂きます。

初回放送日 : 2018/04/01 (日) / 出演 :  小林豆腐工房 小林哲郎さん

「昔ながらの素直な豆腐作りと顔の見える販売をしていきたい」

小林豆腐工房 千年豆腐の店主の小林哲郎さんは明るく気さくな人柄で周囲を魅了する。
一方で、豆腐作りを通じて独自の哲学を持つ男性でもある。

そんな小林さんの豆腐作りに密着してお話を伺った。

豆腐作りは前日の午後3時から原料となる大豆を浸漬(しんせき)させることから始まる。
10数時間以上 浸漬させた大豆を煮上げ、すりつぶしてから豆乳とおからに分ける。
おからはそのまま商品として販売したり近所で飼われている馬やうさぎの餌に提供したりして一切無駄にはしない。

豆乳は温度が冷め切らないうちに天然のにがりを2回に分けて加える。これを「二段打ち」と呼ぶ。
一度目のにがりを加えると小林さんは櫂(かい)と呼ばれる細い札状の木の板を使ってゆっくりと豆乳をかき混ぜ始めた。
小林さん「これ、にがりと豆乳とを混ぜるためにしているのだと思うでしょ?」

実は、この作業、豆乳の固まりぐらいをチェックするのだという。

 

タンパク質がにがりによって固まり始めてくると、混ぜている櫂に抵抗を感じるようになる。

 

長年の経験がその頃合いを見図る。そして二度目のにがりを加える。

この工程の最適の温度は78℃。

これもまた長年の経験で手でその温度を計る。

二度目のにがりを加え、一度目と同様にゆっくりと丁寧にかき混ぜる。

段々と櫂に抵抗がかかり、ふわふわとして小さな豆腐の固まりが一つまた一つと出来ていく。

これが「おぼろ豆腐」だ。
 

 「おぼろ豆腐」は型に流す前の、ふわふわとした水分を多く含む豆腐のこと。出来たては温かく、柔らかい。その味わいはとても甘く、僅かににがりの苦味も残る。

 

 「おぼろ豆腐」を柄杓(ひしゃく)ですくって木綿布をかぶせた四角い型に入れる。

 

一つの型で約30丁、一度の作業で型2つ分の60丁を仕込む。

 

表面を均一になるようにならしてから木綿布で丁寧に包み重しを乗せしばらく置く。こうすることで余分な水気を切るのだ。


ふわふわとしたほんのり甘い「おぼろ豆腐」は、こうしてしっかりとした歯ごたえと濃い味わいの「木綿豆腐」となる。

水槽に出来たての木綿豆腐を型ごと入れて、崩れないよう丁寧に型から抜き木綿布をはずす。水の中で1丁づつ切り分けたら完成だ。

が、まだしばらく水にさらして置くのだという。
こうすることでにがりの「苦味」が抜けていくのだ。

小林さんは言う。
「お客様の中には苦味を気にする人もいるから、こうするようにしています。丁寧に昔ながらの豆腐作りをすることには変わりはないけれど、常にお客様の立場に立って喜んでもらえるよう努力することは必要だと思います。」

完成だ。

豆腐作りの現場から、今ではコンビニエンスストアでも買うことが出来る身近な存在となった豆腐だが、本来は大量に流通させることなど出来ない食材なのだと感じた。

そう伝えると、小林さんは真摯な面持ちで頷いた。
「今時インターネットでも豆腐を買うことが出来てしまうけど、その土地でしか作ることが出来ないものを作った人から買うことって大事だと私は思っています。買い物の基本はそこだと思います。
だから私は昔ながらの豆腐の作り方を守っていきたいし、昔ながらの買い物の形っていうのも残していきたいと思って、こうして豆腐屋やってるんです。」

千年豆腐という屋号にこめられた小林さんの思いが詰まった豆腐は、大豆の味がしっかりとして力強い。

お勧めの食べ方は、過度な味付けや調理はせずにできるだけシンプルに食べること。
まずはそのままで。
次にミネラルたっぷりの自然塩をかけて。これにオリーブオイルやごま油をかけても美味しい。
またしっかりと弾力があるので、水切りせずにそのまま豆腐ステーキにも◎
ぜひお試しあれ。


★〈食材を引き立てる調味料の選び方のポイント!〉

  • :昔ながらの製法で塩田などで自然に濃縮する製法で作られた天日塩などの自然塩との相性が良い。
    ※インターネットで調べる場合は天然塩や自然塩などで調べるとオススメ。
  • オリーブオイル:オリーブの果実を搾ってろ過しただけのエキストラバージンオリーブオイル。プラスチック容器ではなく遮光瓶や缶に入ったものを選ぶと良い。
    ※インターネットで調べる場合は、コールドプレス製法などで調べるとオススメ。
  • ごま油:遺伝子組換えでない胡麻を原料とし圧搾法で作られたもの。
    ※インターネットで調べる場合は、圧縮法などで調べるとオススメ。選ぶ時にはプラスチック容器ではなく瓶や缶に入ったもの。価格も目安に。安価なものでは薬剤や着色料などを使用したものもある。

小林豆腐さんのお店情報

≪小林豆腐工房≫
長野県茅野市湖東260-1
電話:0266-77-3102(ナナサントウフ)
携帯:090-1659-0102(イロコクオトウフ)
水曜定休

文:中村恭子
一般社団法人蓼科塾代表/地産地消料理研究家
健康管理士/食育アドバイザー
2011年東京都より長野県茅野市に移住。料理教室の開催、地産の伝統野菜を紹介するイベントの企画・運営やそれらを使った料理・菓子のメニュー開発等を行う。2015年、信州の魅力を県外に発信する一般社団法人蓼科塾を設立し代表理事に就任。地産地消に根ざした商品開発やイベントの企画・運営等を手がける。

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